新Jay's時事英語研究

実際の翻訳案件ではよく見かけるものの、一般の辞書や規範文法書ではなかなか理解できない用法などを集めて解説します。 加えて、辞書では見出語だけで例文がないものも集めて用例解説します。

関係代名詞の that

一般の文法書では、先行詞が「人」の場合は who または whom、「人以外 (物・事)」の場合は which が好んで使用され、関係代名詞の that は、先行詞が強い限定を受けている、先行詞が「人」と「人以外」の両者を列挙している、あるいは先行詞自体が不定代名詞 (everything, something, anything など) である、といったやや特別な場合に使用されると記述しています。しかし、現代英語ではややや異なる使い方をしているようです。今回は、この点について考えてみましょう。

関係代名詞の that は現代英語では意外に多用されており、先行詞が「人以外 (物・事)」の場合によく見かけます。一方 which は ,which のようにカンマを伴う形での使用が比較的多く、ワードでも which の前にカンマがないと、緑色の下線が引かれ再考を促されます。

「カンマを伴う」というとすぐ「非制限用法」を思い浮かべる人がいますが、実際の英語ではカンマの有無だけで「制限用法」と「非制限用法」の違いを識別することはできません。事実、オーサーが恣意的にカンマを打ってくることはよくあることなので、翻訳の際、注意が必要です。

下記の例を見てみましょう。

a. A computer is a device which can do many things.
b. Remember that your computer is a device, which is sensitive to extremes of heat, cold, magnetic fields, and rapid changes in its electrical supply.

a. の文は which の前にカンマがありませんから「制限用法」、b. の文は which の前にカンマがあるので「非制限用法」と考えるのが規範文法上正しい解釈になります。しかし、b. の文は「コンピューターは装置であり、これは〜」ではなく「コンピューターは〜する装置である」と訳したほうが明らかに分かりやすくなります。このように形式だけでは判断できないのが実際の英語です。文脈を十分理解した上で訳すようにしましょう。