新Jay's時事英語研究

実際の翻訳案件ではよく見かけるものの、一般の辞書や規範文法書ではなかなか理解できない用法などを集めて解説します。 加えて、辞書では見出語だけで例文がないものも集めて用例解説します。

接頭辞in-

本日は接頭辞in-について考えます。単語と一体化して理解していることが多いため、普段はあまり意識しないかもしれません。しかし、実際の翻訳ではこのあたりも意識する必要があります。特に、in+[完全/全体/100 %を表す表現] の場合、「完全否定」と「部分否定」どちらの意味で使用されているか判断する必要があります。なぜか、このあたりは辞書や参考書でも明確に説明していません。以下に inappropriate の例を挙げましょう。

・(…に) 適切でない、不適当な;妥当でない、似つかわしくない (ランダムハウス)
・〔…に/…するのに〕不適当な、ふさわしくない、時宜に合わない (ジーニアス)
・不適当な、不穏当な (リーダーズ)
・不適切な、不適正な、不適当な、ふさわしくない、不穏当な、適切さを欠いた (ビジネス技術実用英語大辞典)

ここで問題となるのは日本語の接頭辞である「不」です。これは、結びつく語によって 100 % 否定のニュアンスが強くなります。上記の「不適切」は「適切とはいえない」よりも意味が強く、文脈によっては「適切」と対極の意味になります。

そのあたりをしっかり考えて訳語を当てているのは、ビジネス技術実用英語大辞典です。「適切さを欠いた」はこのニュアンスがしっかり出ていますね。