新Jay's時事英語研究

実際の翻訳案件ではよく見かけるものの、一般の辞書や規範文法書ではなかなか理解できない用法などを集めて解説します。 加えて、辞書では見出語だけで例文がないものも集めて用例解説します。

形容詞 enough の用法#3

本日は、前回触れた enough + [名詞] + to do と [名詞] + enough to do には意味上の違いに関する補足説明です。

(1) [名詞] + enough and to spare で「あり余るほどの [名詞] 」という表現があります。これは、よく money enough and to spare (あり余る金) という表現で知られています。これは、前回触れた名詞の後ろに enough to...がつながると「多すぎる」という意味になることを支持するものです。ここから、英語基本形容詞・副詞辞典では、次の表現は不可としています。
×He has enough money and to spare.

(2) ところが、ジーニアスでは「enough [名詞] and to spare も可」という記述があります。非常に混乱しますね。そこで、money 以外にもいくつか名詞を変えて Google で用例検索をかけてみました。
a. money を修飾する例
・money enough and to spare: 486,000 件
enough money and to spare: 940,000 件
b. water を修飾する例
・water enough and to spare: 125,000 件
enough water and to spare: 7 件
c. space を修飾する例
・space enough and to spare: 77,100 件
enough space and to spare: 1 件 (*しかも中国のサイトでした)

結論としては、[名詞] + enough and to spare が語法上正しいが、修飾する語句によっては enough money and to spare のような表現も存在する。しかし、逆転現象が起きる例は money 以外まれ、といえるでしょう。このように 1 つ辞書だけではなかなか真実はつかめません。必ず複数の辞書や参考書に当たるようにしましょう。